漢検1級に興味があるけど、受かって良いことある?
何でもすぐに検索できる時代、1級レベルの漢字を覚える意味はないのでは?
実際に合格した人から1級の意義について聞きたい!
本記事では、このような疑問や要望のある方をサポートします。
漢検1級は、言わずと知れた日本漢字能力検定の最上位級です。
テレビ番組やYouTubeなどでは、漢検1級を持つタレントが鮮やかに漢字クイズに答える姿をよく見かけますよね。
とはいえ、データを見てみると1級の合格率はかなり低く、リピーター(すでに合格済みの高得点ハンター)の存在がありながら10%前後です(公式のデータはこちら)。
対象となる漢字は約6000字(常用漢字を含む)で、準1級の倍の数になります。そしてその多くは、一般的には意味不明な宇宙語のような漢字たちです。
そんな漢検1級ですが、クイズ番組に呼ばれるわけでもない一般人にとっては一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
また、パパッと検索してたいていのことがわかる時代、多くの時間をかけて1級を取得することに意味はあるのでしょうか。
この記事では、実際に1級に合格した筆者が思う「漢検1級を取得するメリット&デメリット」を語っていきます。他ではあまり聞けないであろう「合格したからこそわかるデメリット」についても切り込みます。
簡単にまとめると、下記が今回の結論です。
メリット
・漢字愛の確固たる証明になる!
・硬い言葉への抵抗感が消える!
・常用漢字の奥深さに気づける!
→ 漢字が好きなら学んで損なし
デメリット
・書き能力の発揮場所が少ない…
・メンテナンスが困難を極める…
→ 実益志向なら1級は不要かも
もちろん、漢字が大好きで時間もあるなら1級の道に突き進むとよいです。ただ、物事には優先順位があるので、このまま1級の勉強に踏み込むべきかどうか迷っている人も少なくないことでしょう。
そういった方々に、今後の進退を決める1つの参考としてこの記事が役に立てば幸いです。
素晴らしきメリット
まずはメリットについてです。冒頭で述べた通り、大きく以下の3点が挙げられます。
- 漢字愛の確固たる証明になる
- 硬い言葉への抵抗感が消える
- 常用漢字の奥深さに気づける
以下、それぞれ詳しく書いていきますね。
明白な漢字愛の証明に!
漢検1級は、よほどの漢字好きでないと取得が困難です。
よって1級を持っていることは誰の目から見ても明らかな「漢字愛」の証明になります。もちろん膨大な時間と労力によって得られる称号なので、大きな自信にもなります。
実際のところ、準1級を持っている時点で相当の漢字力があることは自明でしょう。ただ、頭一つ二つ抜けた漢字力&漢字愛を示したいのなら、ぜひとも「準」を脱したいもの。
私自身、準1級に受かってから1級を取るまでに8年の期間(中3〜大4)を経ています。
中学生の頃からずっと漢字が大好きでしたが、この期間は心のどこかで「こんなに大好きなのに“準”1級か」というもどかしい思いがありました。1級合格後は「名実ともに」の「名」が手に入り、いっそうの誇りを持てました。
また、周りの人から「漢字といえばこの人」という認識を持たれるのも1つのメリットです。
自己紹介で漢字好きをアピールするついでに「漢検1級」というパワーワードを持ってくると強烈な印象を与えられます。ちょっとした会話のきっかけにもなりますね。
硬い言葉など怖くない!
1級レベルの知識があると、当然ながら難しい漢字がちりばめられた文章も平然と読むことができます。
たとえば、古い時代に書かれた本でもまったく気後れすることはありません。
私は最近、50年以上前に翻訳された海外詩集を読んだのですが、1級でお馴染みの漢字たちとよく再会しました。この手の本は難しい漢字にも振り仮名がないことが多いので、漢字に強くなければ消化不良感が大きかったと思います。
そのほか、専門書や論文などのアカデミックな文章でも語彙レベルで苦労することはありません(もちろん専門用語は別ですが)。むしろ「うおっ!この漢字がこんなところで!」という驚きや喜び、そして書き手への謎の親近感が湧きます。
さらに文章に限らず、話し言葉についても「普通に生きていたら聞き流すような言葉」がしっかり脳内で漢字に変換されます。
大河ドラマの台詞だったり年配の方の貴重なお話だったり、ひと言ひと言から得られる情報が増えるのは尊いメリットです。
常用漢字の奥深きこと!
言うまでもなく、たくさんの漢字を知るのも1級の面白さです。
しかし意外や意外、勉強すればするほど常用漢字の奥深さに気づけるというメリットもあります。
1級で出題される漢字の多くは、おそらく若い世代であればあるほど出会う頻度は低いです。言ってしまえば、1級に受かっても日常生活が劇的に変わったり世界が広がったりということはありません。どちらかというと「深まる」イメージです。
腰を据えて勉強するとわかりますが、漢検1級の問題では常用漢字もポコポコ登場します。
1級漢字を辞典で調べて「書きかえ 〇〇」という常用漢字への変換マークに遭遇したり、一般的な使い方とは似ても似つかない別の意味を知ったり、そのシチュエーションはさまざま。
たとえるなら、普段から仲良く遊んでいた友達の意外な一面を発見するような面白さがあります。
私は1級の勉強をしたことで「今日まで使われ残った常用漢字たち」に強く興味が湧きました。そして合格してから今に至るまで、原点に立ち返って漢字の成り立ちを学んでいます。
以上が、合格者が思う「漢検1級を取得するメリット」3点です。
漢字が大好きで、かつ時間的な余裕があるなら、上記のメリットを念頭にガンガン勉強に励むことをオススメします。
心悲しきデメリット
ここからは心悲しきデメリットの話です。こちらは2点にまとめました。
- 書き能力の発揮場所が少ない
- メンテナンスが困難を極める
以下、それぞれ詳しく書いていきます。
書く力を鍛える虚しさ…
よくある漢字の悩みとして「読めるけど書けない」というものがあります。
1級レベルの漢字力を身につけると「読めて書けて意味もわかるのに使う機会(とくに“書く”機会)がまったくない」という事態に見舞われます。
当然ながら、1級に合格するためには難しい漢字を「書ける」ことが不可欠です。全体の得点の65%は書き問題になっています。イカつい字形をした漢字や見慣れない漢字が準1級以上に増え、正しく書く力をつけるのは漢字好きでもかなり大変です。
しかし「書ける」ことで日常的に得られる恩恵はほとんどありません。
学習範囲の多くは現在ほとんど使われていない(あるいは平仮名表記が一般的な)漢字なので、書く機会は1級の解答用紙に向かっているときだけという哀愁ある漢字たちが多いです。
加えて、時代は「書く」から「打つ」へと変わりました。多少背伸びした言葉を使うにしても、スマホやパソコンに打ち込んだ時点で機械が漢字に変換してくれます。設定によっては意味も出てきます。
このように、たとえ1級に合格しても「書き能力」を発揮する場所は漢検の外にはほぼないという悲しい現実があるわけです。
メンテナンスの大変さ…
日常でほとんど使うことがないということは、忘却するリスクが大きいということ。1級の勉強では新しく覚えることはもちろん、忘れないように復習することも非常に重要です。
1級の場合、勉強中も合格後も、この「記憶のメンテナンス」がかなり大変になります。
あまり勉強時間が確保できなかったりブランクが空いてしまったりすると、容赦なく合格は遠のいていくでしょう。
かく言う私も、何かと忙しい時期に勉強がおろそかになり、断続的に5回の不合格を経験しました。実にならない努力をしているようで無力感に襲われることも多々ありました。
晴れて1級に合格しても、その日から忘却はどんどん進んでいきます。合格時の漢字力を落とさないためには1級リピーターとして学び続ける道しかありません。
私自身、最終的に1級に合格して偉そうなことを語っていますが、あくまで合格は数年前の話です。以降、興味が湧くものや力を注ぎたいことは変わり、1級漢字のメンテナンスに時間を割くことはあまりできていません。おそらく現状の漢字力では再びの合格は難しいでしょう。
メンテナンスの大変さは「1級の名に恥じない1級保持者であること」と「別の関心分野を突き詰めていくこと」との両立を困難にします。
やりたいことがたくさんある人にとっては苦しいところですね。
以上、1級対策を始める前に心得ておくべき厳しい現実のお話でした。
2点に共通するポイントはズバリ「投資する時間や労力に対する実益の少なさ」だといえます。
たとえば「社会人としてスマートに漢字を使いこなしたい」や「1つ上の漢字力で周囲に差をつけたい」というような、社会生活の充実のために準1級まで取得した実益志向の方にとっては1級は不要かもしれません。
漢検1級に受かる意味・まとめ
以上、私が考える漢検1級のメリットとデメリットでした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
おさらいすると、次のようにまとめられます。
メリット
・漢字愛の確固たる証明になる!
・硬い言葉への抵抗感が消える!
・常用漢字の奥深さに気づける!
→漢字が大好きで余裕もある人は
勉強して損なし!
デメリット
・書き能力の発揮場所が少ない…
・メンテナンスが困難を極める…
→漢字が得意な実益志向の人には
1級は不要かも…
漢検1級の学習は「2級から準1級へ」というステップアップとは質も量もかなり異なります。合格までの道のりは、漢字に得意意識がある人にとってさえ途方もなく険しいものです。
それでも「漢字が大好きだぁぁぁぁぁ!」という一般的に見てやや変態な方はそのまま突き進みましょう。
私が踏み固めた道でよければ、以下の記事にロードマップを詳細に書き残してあります。
この記事が、最上位級の学習に進むべきか迷っているあなたにとって1つの参考になれば幸いです。
それでは!
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