ときどき見かける心理学検定のチラシが気になる…。どんな検定? 難しいの?
心理学専攻だけど合格して何かメリットはある?
実際に受検した人から見た検定の魅力を知りたい!
本記事では、このような疑問や要望をサポートします。
心理学検定は、心理学の大卒レベルの知識を測定する検定です。
心理学に縁がある人でも初学の人でも、誰でも受検することができます。
問われる内容は「広く浅く」志向が強く、設定されているのは全10科目。そう聞くと大変そうですが、出題されるのはあくまで「基礎知識」です。
合格ラインの得点率は各科目で6割。解答時間もたっぷりあるマーク式の検定なので、最上位級(=特1級)であっても合格はさほど困難ではありません。
また、心理学専攻の人が受けても非常に勉強になる試験です。
私もかつて心理学を専攻していましたが、学習範囲の幅広さゆえの多くの発見がありました(2020年に心理学科を卒業、翌年度の検定で全科目に合格しました)。
この記事では、そんな心理学検定の概要やメリット、必要な参考書についてまとめていきます。
実体験を交えながら書いていくので、受検を検討中の方にとってはイメージ豊かな参考になるでしょう。
心理学検定ってどんな試験?
心理学検定は、日本心理学諸学会連合が主催する検定試験です。
先述のとおり、問われる内容は大卒レベルの広範な基礎知識で、誰にでも受検することができます。
以下、そんな心理学検定の基本情報をまとめていきますね。
問われる内容について
まずは内容面について、基本事項を押さえていきましょう。
受検科目は次のとおりです(後述しますが、必ずしも全科目を受検する必要はありません)。
受検科目:全10科目
→A領域5科目+B領域5科目
A:原理・研究法・歴史
学習・認知・知覚
発達・教育
社会・感情・性格
臨床・障害
B:神経・生理
統計・測定・評価
産業・組織
健康・福祉
犯罪・非行
問われる内容は2領域10科目と多岐にわたります。
〇〇理論や〇〇効果といった理論的な内容のみならず、実験法や統計法のようなテクニカルな部分までカバーされています。
A領域は「心理学を学べる多くの大学で開講されている科目」で、基礎的な側面が強いです。
心理学専攻であれば必ず一度は耳にするトピックがたくさん含まれています。
とりわけ「原理・研究法・歴史」は他の科目を包括するような広い視野で心理学全体を理解することが求められ、A領域のなかでは最も異質な科目です。
一方、B領域は「必ずしも大学で開講しているとは限らない科目」で、応用志向が強い領域です。
とくに「統計・測定・評価」以外の4科目については、心理学専攻であってもスルーして卒業するケースが十分ありえます。
また「健康・福祉」や「犯罪・非行」では、法律や施設に関する公共性の高いテーマも含まれ、とっつきにくさを感じる人も多いかもしれません。
初学者への注意点としては、あくまで「知識」の試験であるという点が挙げられます。
研究法や統計法など、大学では体験的に習得する分野さえも机上で勉強しなければなりません。
反対に、心理学専攻者にとってはこの「体験的な習得」が大きなアドバンテージになるでしょう。
なお、各科目の勉強法については以下の記事にまとめています。適宜ご参照ください。
形式や認定級について
続いて、試験形式や認定級についてです。
まとめると以下のようになります。
・試験形式:各科目20問の4択
→ CBT方式(会場のPCで進行)
・試験時間:ABそれぞれ100分
・合格ライン:各科目6割前後
・認定級:全3種類
→ 2級:A領域2科目、
かつ合計3科目に合格
1級:A領域4科目、
かつ合計6科目に合格
特1級:全10科目に合格
+申請
試験自体はA領域100分、B領域100分で実施されます(全科目を解かなくても100分です)。また、2つの領域を別々で受検することも可能です。
形式はCBT(Computer-Based-Testing)方式を採用しており、マウスのクリックのみで解答していきます。紙とペンも用意されているのでメモもできます。
試験は領域ごとですが、合否は科目ごとの判定です。
難易度によって前後するそうですが、各科目20問中12問ほど正答できれば合格となります。
級の認定は「合格科目の数(A領域内&合計)」でなされます。
1級や特1級を取得したいのであれば、AB両方の受検が必須です。
ただ、一度合格した科目は5年間有効なので、1回の試験で条件を満たす必要はありません。有効科目を忘れてしまった場合には照会もできます。
なお、特1級のみ、結果がわかったあとに当局への申請が必要です(申請料:3,300円)。
その他の事務的な情報
最後に、受検料や試験日程など、事務的な情報を以下にまとめます。
※日程は2024年「夏季」試験(第19回検定)のものです。
・受検資格:なし
→誰でも受検可能
・受検料:各領域 7,700円
※A+B:セット割 12,100円
・試験期間
7月12日(金)〜 8月31日(土)
・受検予約開始日
5月14日(火)
・セット割や団体割の申込期間
5月7日(火)〜 6月30日(日)
・受検会場:全国各地のCBT会場
・結果の発送:試験期間終了の翌月末
冒頭で述べたとおり、誰でも受検可能です。
検定は春季と夏季で2回実施されます。
受検予約は希望する検定日の60日前から可能です。ABともに受検する場合にはセット割を利用できます。そのほか10名以上が対象の団体割もあります。
セット割や団体割を利用するためには事前に受検チケット(=メールで届くクーポンコードで、パスワードのようなもの)の発行が必要です。
この電子チケットの申込みがギリギリになると受検できる日が限られてきます。割引を利用するなら早めに申請しましょう
ちなみに、割引を使うときの申込みの流れは次のとおりです。
- 受検チケットの申込み
↑割引に必要なクーポンコード - 受検料の振込み
- 当局による入金の確認
- 受検チケットの受け取り
↑メールで届きます。 - 受検の申込み(=受検予約)
そこそこ時間がかかる手続きなので、繰り返しになりますが早めの申請をオススメします。
なお、受検会場は全国各地のCBTに対応している会場で、こちらの公式ページから確認できます。
最後に、検定結果の通知書についてです。
通知書には合否と偏差値が表示されます(不合格の科目では合格への近さも評定されます)。1級までは賞状が同封され、全科目に合格して特1級の申請をするとその約2週間後に気合いの入ったファイル付きの賞状が届きます。
以下、ちょっと自慢の参考画像です。
以上、心理学検定の基本情報でした。
受検の意志が固い方は、必ず「心理学検定 公式サイト」の方もチェックしてくださいね。
受検するメリットってある?
ここからは、心理学検定を受けるメリットについて3点お話しします。
さきに述べておくと、心理学検定は就職や進学の決定打になるほどの資格ではありません。
この点に期待している人は別のことに時間を割くべきなので、受検を考え直す必要があるでしょう。
それを踏まえたうえで、受検するメリットを3つ挙げていきますね。
心理学を大局的に学べる
何より大きなメリットは、検定に向けて勉強することで広範な心理学の知識が得られるという点でしょう。
訓練が必要なテクニカルな分野(研究法や統計など)を除くと、初学者でも真剣にチャレンジすれば並の専攻者以上の知識が得られます。
内容は基礎レベルですが出題範囲が幅広いため、大学で心理学を勉強したことがあっても多くの発見があります。私も心理学を専攻していてほぼほぼ理解した気になっていましたが、検定の勉強中は無知に気づかされる毎日でした。
また、受検する領域や級の認定もそれなりに柔軟なので、好きな分野から徐々に高みを目指していくこともできます。
心理学は分野同士のリンクが強いので、1つの分野を学んでいると関連する別の分野にも興味が湧きがちです。小さな一歩から知識を広げていくのも1つの手だと思います。
以上から、すでに心理学を学んでいて知識の拡張をはかりたい方や、学問としての心理学に興味が湧き始めた初学者の方とって、心理学検定は最適なツールだといえますね。
大学院入試に活かせたり
2つ目のメリットは院試についてです。
公式サイトの「心理学検定のメリット」によると、以下8つの大学院が心理学検定の合格者に優遇措置を提供しています(取得級によって一部試験が免除されたり、検定結果が審査に加点されたりといった措置です)。
- 北海道大学
- 目白大学
- 福山大学
- 神戸学院大学
- 神戸松蔭女子学院大学
- 広島文教大学
- 鳴門教育大学
- 宇部フロンティア大学
これらの大学院を受ける方にとっては、心理学検定が院試対策の負担軽減に役立つかもしれません。
とはいえ、上記の大学院を志望する方でも検定を過信するのは禁物です。
私も院受験の経験がありますが、基本的に院試で大切なのは研究計画になります。優先順位を考えて対策しましょう。
学会に関わりを持ったり
経験的な話はできませんが、学会への入会や他の資格取得に心理学検定を活かせる場合もあるようです。
以下、簡単にまとめておきます。
入会資格について
・日本カウンセリング学会
22歳以上の心理学検定2級合格者 *
*「発達・教育」か「臨床・障害」
に合格
・日本応用心理学会
一般 / 院生会員の希望者で、
22歳以上の心理学検定1級合格者
※ 現会員による推薦が必須
他の資格取得について
・カウンセリング心理士
日本カウンセリング学会への入会
→ 一定期間の在会および研修
→ 試験
・応用心理士
日本応用心理学会への入会
→ 満2年以上の在会
→ 一定の研究実績や実務経験
→ 申請(試験はなし)
・健康心理士
心理学検定2級以上の合格
→ 試験
日本カウンセリング学会への入会では心理学検定の結果をストレートに活用できるようですが、日本応用心理学会では現会員による推薦が必須です。
その他の資格取得については、いずれも検定後に乗り越えるべき壁がガッツリ存在します。
あくまで取得のきっかけとして検定結果を利用できなくもないといった印象ですね。
これらの資格取得に興味がある方は、以下の公式サイトをご参照ください。
- 日本カウンセリング学会
日本カウンセリング学会の入会資格 - 日本応用心理学会
日本応用心理学会の入会資格 - カウンセリング心理士
カウンセリング心理士の資格要件 - 応用心理士
応用心理士の資格取得要件 - 健康心理士
健康心理士の資格取得要件
以上、心理学検定のメリットでした。
対策は5つの公式参考書で!
最後に、受検に向けて動き出そうとしている人のために日本心理学諸学会連合が編集している公式参考書についてまとめておきます。
心理学検定に合格するには、公式教材によるインプットやアウトプットが不可欠です。
現在4冊(+用語辞典)が刊行されているので、簡単に特徴を紹介したいと思います。
基本キーワード
公式参考書のなかでも、とくに網羅性に優れているのが『基本キーワード』です。
全領域の重要事項をカバーしており、しっかり吸収すれば上位合格(高い偏差値での合格)も見えてきます。
私の体感として、本番での好成績に貢献したのは圧倒的にこの『基本キーワード』でした。300ページを超えるボリュームなので読み込むのは大変ですが、その分リターンは大きいです。
ただ、エッセンスを凝縮して簡潔に表現しているため、初学者にとっては理解に苦しむ部分もあるかと思います。
私の場合、未習得の分野については後述の『一問一答』を3周して用語に慣れることで理解のハードルを下げることができました。
心理学全般が初学の場合には、まずは読みやすい概論書に目を通してから『基本キーワード』に着手するというステップもありでしょう。
個人的に読みやすかった教材として、創元社の『心理学ビジュアル百科』や有斐閣の『心理学』を紹介しておきます。どちらもA領域と親和性が高く、私が大学1、2年生のときによく読んでいた本です。前者はとくに画像が多くてサクサク読めます。
公式問題集
続いて、アウトプットに欠かせない『公式問題集』です(2024年バージョン新発売!)。
この本のメインコンテンツは、以下の2点です。
- 過去問 50問
→ 各科目5問ずつ - 模擬問題 400問
→ A領域の各科目 45問ずつ
B領域の各科目 35問ずつ
過去問は、言わずもがな有用です。実際に出題された問題なので難易度をチェックするには過去問を見るのが一番の近道でしょう。
私は模擬問題に気をとられて過去問を直前期に解くことになりましたが、おおかた正答できたので自信を持って本番に臨めました。
本番と比較すると、模擬問題は文章量が多くて難度がやや高めな印象です。
なので初期に取り組むと打ちのめされるリスクがあります。解説についても1冊で解決しないことがよくあるので、他の教材と組み合わせて実力試しに使うとよいでしょう。
ちなみに、本の冒頭では心理学検定のガイドラインや参考書籍の紹介にページが割かれています。モチベーションの維持やより深い学習をしたいときに大いに役立つコンテンツです。
一問一答問題集
最後に、初学者にやさしい『一問一答問題集』をご紹介します。
領域別のハンディーサイズということもあり、非常に取り組みやすい2冊。
タイトルのとおり一問一答形式で学習を進めるタイプで、だいたい「1科目100問以上」の問題が収録されています(赤シート付き)。
また、科目ごとに「実力確認問題」という正誤判定問題(各50問)も収録されています。
私はこの問題集から本格的な対策をスタートしました。
とくに未習得の科目の「用語慣れ」に有効だった感覚があります。なので未知の科目や苦手な科目については『一問一答』を経て『基本キーワード』に進むとよいでしょう。
この本だけで合格するのは難しいですが、専攻者でも初学者でも手を着けやすい問題集です。
以上の公式参考書をうまく活用することが、心理学検定合格の決定打になります。
なお、これらの教材をガッツリ使った個人的な受検体験記の記事もあるので、よかったら読んでみてください。
追記:用語辞典も発売!
上記に加えて、2023年、新たに『心理学検定 専門用語&人名辞典』も発売されました。
用語ベースで勉強したい人には有用かもしれません。気になる方はぜひチェックしてみてください。
心理学検定とは?まとめ
以上、心理学検定の概要とメリットでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
全体を一文でまとめると、
心理学検定は、誰でも受検可能で、学問としての心理学の広範な基礎知識が問われ、院試や学会入会などにも活用でき、公式の参考書を使ってしっかり対策すれば合格できる検定試験である!
といった感じになります。
この記事が、受検を検討中の方にとって何らかの行動を起こすヒントになれば幸いです。
それでは。ファイト!
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