心理学検定の勉強をしたい!いったい何から始めればいい?
10科目もあるけど、公式の参考書だけで対応できる?
なるべく時間を節約したい…。科目別の勉強のコツは? 合格者に聞きたい!
本記事では、このような疑問や要望をサポートします。
心理学検定は、心理学の大卒レベルの知識を測定する検定です。心理学専攻の人でも初学の人でも受検できます(検定そのものについては以下の記事でまとめているので、概要をご存知ない方はご一読ください)。
→【心理学検定とは?】概要とメリット
認定級は全10科目の合否で決まり、問われる内容は多岐にわたります。
あまりに範囲が広いため、どの科目をどのように勉強すればいいのかよくわからない人も多いかもしれません。
この記事では、全体に通じる勉強法から科目別の学習ポイントまで、私自身の受検体験をもとに心理学検定の勉強のコツを解説していきます。
ちなみに私は心理学科を卒業した数年後に検定を受けました。なのでどうしても専攻者目線で語ってしまう部分もあるかと思います。その点、あらかじめご了承ください。
心理学検定・全体的な勉強法
まずは全科目に通じる勉強法です。
メインの参考書
心理学検定の勉強では、公式の参考書をうまく活用するのが合格のポイントです。
重要な教材は、4冊あります。
まずは『基本キーワード』。とくに網羅性に優れている教科書的な1冊です。
2冊目は『公式問題集』。過去問と模擬問題が収録された問題集です。
問題の雰囲気を知りたい場合には、この公式問題集の「過去問」をチェックするのが一番だと思います(模擬問題の方は問題によって難易度にばらつきがあるので要注意)。
公式問題集の構成と問題数
過去問:各科目5問(計50問)
模擬問題:計400問
A領域:各科目45問
B領域:各科目35問
ラスト2冊は『一問一答』。手軽に取り組める領域別の問題集です。
一問一答に収録されている問題数
A領域
原理・研究法・歴史:132 問
学習・認知・知覚 :196 問
発達・教育・ :151 問
社会・感情・性格 :119 問
臨床・障害・ :131 問
B領域
神経・生理・ :139 問
統計・測定・評価 :152 問
産業・組織・ :116 問
健康・福祉・ :135 問
犯罪・非行・ :122 問
基本的には、上記4冊をやり込めば合格できます。
ただ、例外として「犯罪・非行」分野の対策には法務省の『犯罪白書』が必読です。
一見「公的なお堅い文書なのでは…」と気後れしがちですが、まったくそんなことはありません。非常に読みやすくまとまっていてスイスイ読める資料です。
2023/6/14 追記:上記に加え、新たに『心理学検定 専門用語&人名辞典』が発売されました。用語ベースで勉強したい人には有用かもしれません。気になる方はぜひチェックしてみてください。
勉強のポイント
続いて、全体的な勉強のポイントに入ります。
どの科目も短期集中の繰り返しで
まず、全科目に通じる勉強のコツとして「短期集中の繰り返し」が挙げられます。
心理学は分野同士のつながりが密接なので、長い時間をかけて1つの科目を仕上げるより「短期間で1科目をさらってすぐに別の科目へ」というのを繰り返す方が総合力が磨かれます。
私が検定に挑んだときは「1日1科目」ペースで集中的な学習を繰り返していました。最初はかなり大変でしたが、結果的には効果絶大でした。
この短期集中戦略の最終形態として、私のB領域受検直前の学習スケジュールを提示しておきます。詳細は学習過程の記事にありますが、ここではあくまでイメージとして眺めてみてください。
これは極端な例ですが、とにかく全科目をテンポよく切り替えて学習していくのがベストです。
苦手(初学)科目は一問一答から
広く全体を学んだことのない科目については『一問一答』から始めるのがよいでしょう。
とくにB領域の科目(統計を除く)は心理学専攻でも履修せずにスルーする場合がありえます。
私も統計以外の4科目はほとんど初学の状態だったので、手軽に取り組める『一問一答』で基礎的な部分を勉強しました。
手始めに『一問一答』をこなすと重要な用語に慣れ、科目全体の雰囲気をつかむことができ、その後の学習がとても楽になります。
たとえば、苦手な科目を勉強するときに『基本キーワード』から始めると、知らない用語だらけでやる気がなくなってしまうリスクが大きいです。しかし『一問一答』を3周くらいしてからであれば、かなり読みやすくなります。
メンタル面を考慮しても、苦手科目はハンディーな『一問一答』から始めるのがオススメです。
得意科目は基本キーワードで洗練
それなりに学んだことがある科目については『基本キーワード』と『公式問題集』をこなすのが最良でしょう。
私の場合、おおかた学習済みのA領域でも『一問一答』を使いましたが、そこまで新しい知識は学べませんでした。
一方で『基本キーワード』は知識の増強や再整理に大いに役立ち、『公式問題集』は絶妙なところを突く問題が多く、どちらもかなり有益でした。
とくに『基本キーワード』の内容をガッツリ頭に入れれば好成績で合格する力がつきます。
なお、公式問題集を解いてみて余裕がありそうな科目(7割くらい正答できる科目)については、一時的に放置しても問題はないと思います。苦手科目との兼ね合いもあるので、オーバーワークを避けたい人は参考にしてください。
以上が、心理学検定の全体的な勉強のポイントです。
参考までに、私がそれぞれの参考書をいつどのように使ったのかについては以下の記事にまとめています。ストイックに上位合格を目指したい人には、とくにオススメです。
心理学検定・科目別の勉強法
続いて、科目別の学習ポイントをご紹介します。
注意点として、どれも個人の経験則なので万人に有効とは限りません。その点を踏まえたうえで参考にしていただけたらと思います。
心理学検定「A領域」
原理・研究法・歴史
A領域の中でも「原理・研究法・歴史」はとくに異質です。どの科目にも関係してくる共通性の高い科目だといえます。
勉強のコツとしては、最初に腰を据えてやり込むのではなく、ぼんやりした理解のまま別の科目に時間を割くことが意外と大事です。
あとあと戻ってきてその科目で学んだ内容と照合するようなイメージで勉強していくと効率よく定着します。
なかでも「歴史」は時間感覚や流れが重要です。「何がいつ起こったのか」や「それが何にどのような影響を与えたのか」など、そこそこ広い視野を持たなければなりません。
簡単な作図をしてざっくり流れをまとめ、細かい知識と紐づけていく方法が個人的にはオススメです。
たとえば「アメリカの心理学」のポイントを次のようにメモします。この図解メモの流れを押さえつつ「構成主義は〜で、機能主義は〜で、コロンビア学派には〇〇がいて…」というようにテキスト由来の知識を思い出す訓練をすると効果的です。
とくに初学者の方は、最初の科目だからといって必ずしも一番に勉強する必要はないです。広く浅く、かつ抽象度が高いので、挫折するリスクも大きくなります。
関心のある分野から勉強を始めたり、一問一答で大枠をとらえたり、じっくりコトコト総合力を養っていくイメージで進めていきましょう。
学習・認知・知覚
「学習・認知・知覚」は日常生活との親和性がかなり高い科目です。学習内容をすぐに日常に活かせることも多く、実践しながら知識を蓄えていけます。
とくに「学習」は勉強のみならず行動全般に関わる分野なので、普段の行動にリンクさせて考える癖をつけるとよいです。
たとえば、私は海外ドラマをよく見るのですが、勉強の気が進まないときに「この範囲を勉強したら1エピソード見る」と自らにルールを課して乗り切ることがよくあります。
プレマックの原理(高頻度の反応は低頻度の反応を増やせる)を学んだときには、この自分ルールを思い出しながらポイントを押さえました。
続いて「認知」と「知覚」については、メカニズムの理解が大切です。
文章を読んでいるときの言語処理過程だったり平面に奥行きを感じる理由だったり、当たり前のことにアカデミックな説明づけがなされます。
自分がその行動をとっているときをイメージしながら、あるいは実際に体感しながら学習を進めると身につきやすいでしょう。
発達・教育
「発達・教育」は自分の人生と関連づけて学べる科目です。これまで経験してきた心身の成長、受けてきた学校教育など、自分史をフル活用しながら勉強すると面白くなります。
とくに「発達」では、フロイトやピアジェ、エリクソンなどの超有名学者の理論を押さえるのが先決です。
ちなみに、それらの理論にはよく階層性が絡んできます(認知発達段階、ライフサイクルなど)。経験済みの段階については「自分はどうだったか」のようにリンクさせると忘れにくいです。
そして「教育」の方は、自分の学校生活を思い出しながら勉強していくとよいです。
「あの授業はこの教授法を活用していたのか」や「学校教育の裏側にはこんな仕組みがあったのか」など、当たり前のように切り抜けてきた過去の教育環境と照らし合わせると理解が深まるでしょう。
まとめると、両分野とも学習内容に「自分史」を対応させることがポイントですね。
社会・感情・性格
「社会・感情・性格」は学習系と同様、日常生活との親和性が高い科目です。とりわけパーソナリティや人間関係といったトピックは「人間の心理」色がかなり強いので、興味のある人も多いでしょう。
なかでも「社会」では、実験にフォーカスするのが1つのポイントです。
「誰々がこんな実験をしてこんな理論を打ち立てた」というような「人物ー実験ー理論」の3点を意識するとストーリー性のある理解ができます。
「感情」については、発達系や「神経・生理」など、さまざまな分野が関わってきます。なので一度の学習でピンとこなくても他の分野を経て理解が深まることも多いです。
また、研究対象が“感情”1つなのに対して学説が多いという特徴もあります。「誰の何理論」という「人物ー理論」のペアはしっかり定着させましょう。
「性格」についても同様で、「人物ー理論」をしっかり押さえることが重要です。
また、1つの用語に対して複数の用語が紐づいているパターン(ビッグ・ファイブの開放性、誠実性、外向性…など)も頻発します。
語呂合わせを作ったり友人にあてはめてみたり、あれこれ工夫して網羅していきましょう。
臨床・障害
「臨床・障害」は、A領域の中でも応用的な側面が強い科目です。もちろん基礎理論の話もありますが、心理療法や精神疾患の分類など、机上の学習だと若干イメージしづらい部分もあるかもしれません。
かく言う私も「臨床・障害」は苦手科目で、愚直に暗記するような勉強しかできませんでした。
大層なアドバイスはできませんが、受検後、心理療法や精神疾患に関してはもっと注力すべきだったと感じました。『基本キーワード』では右端に補足部分があるのですが、その辺もポコポコ出題され、いくつか間違えた記憶があります。
なので個々の療法や疾患について特徴や関係性をまとめることが1つのポイントになるでしょう。
基礎理論の学習については先述の「誰がどんな理論を」から深めていく形でOKです。好成績を取りたい場合は『基本キーワード』の補足部分まで入念に確認することをオススメします。
心理学検定「B領域」
神経・生理
「神経・生理」は細かな脳部位や物質名が登場する理系チックな科目です。手軽に取り組める『一問一答』さえ、人によっては大変かもしれません。私もほぼ初学だったので苦労しました。
ただ、この科目は『基本キーワード』と『公式問題集』の相性が抜群であるという利点があります。
内容の重なりが大きく、『基本キーワード』で覚えたことをストレートに『公式問題集』でアウトプットできる傾向が強いです。
私は定着度に自信がないまま『基本キーワード』の「神経・生理」パートを読み始めました。
3周ほど読み込んで『公式問題集』の模擬問題にトライしたところ、間違いの選択肢の理由まで頭の中で説明しながら解けるようになりました(本番の結果は偏差値84でした)。
それくらい両テキストの相性が良好で、相乗効果が高いです。
なので「神経・生理」では『基本キーワード』と『公式問題集』を交互にこなすことが頭一つ抜けるポイントだといえます。
たとえ『一問一答』が半知半解でも、そこそこ慣れた段階で『基本キーワード』に進んでしまって大丈夫です。用語に軽く免疫がつけば急成長できます。
統計・測定・評価
「統計・測定・評価」は、研究に必要なツールやその解釈の方法を学ぶ科目です。統計手法やその読み取りについては専攻者でも苦手な人が多く、全科目のなかでもとくに嫌われる傾向があります。
そんな嫌われ者「統計」の勉強では、公式の参考書にじっくり向き合う王道のやり方がオススメです。
ハードルの低い『一問一答』で重要語を押さえ、『基本キーワード』や『公式問題集』を繰り返すことで合格力を養いましょう。
注意点として、『基本キーワード』は、見開き2ページ以内で1テーマをまとめる制約が災いして高度な手法(SEMなど)がかなり勉強しづらいです。
この辺については全17テーマのうち3テーマくらいなので、特徴と関連用語を押さえるだけでも何とかなると思います。その分、ベーシックな手法(t検定や分散分析など)に注力しましょう。
また受検後の体感として、『公式問題集』の模擬問題より本番の方が簡単で、かつ必要な計算もシンプルでした。『公式問題集』で苦戦したとしても十分見込みはあるので、しぶとく頑張ってください。
一方「測定」と「評価」については他の科目と同様、理解して覚えるスタイルになるので恐れる必要はありません。
この2分野はとくに「発達・教育」や「研究法」との関わりが強く、並行して学んでいくと定着がグンと早まります。
産業・組織
「産業・組織」は生活環境と密接に関わる科目で、とくに社会人にとっては馴染みのある話題も見受けられることと思います。
また、ある1つのテーマに対して多くの理論やモデルが出てくるのも大きな特徴です。
たとえば「仕事への動機づけ」というテーマでは、「X-Y理論」や「動機づけ-衛生要因理論」、「道具性期待理論」などが登場します。
勉強のコツは社会系と同様、「人物ー理論」の対応やその位置づけを押さえること。
上の例だと「マグレガーのX-Y理論やハーズバーグの動機づけ-衛生要因理論は動機づけの“内容”に関する理論、ヴルームの道具性期待理論は“過程”に関する理論」という具合です。
1テーマに密集する用語をいかに整理して理解できるかがポイントになります。
健康・福祉
「健康・福祉」は保健の授業で学ぶような親近感のある内容もあったり法律や制度などの堅めの話題もあったりと、落差の激しい科目です。個人的には一番「心理学」色が弱いと感じました。
「健康」は、理論やモデルが少なく取り組みやすい一方、1つのモデルを細かく理解していく必要があります。
また、合理的行為理論と計画的行為理論、エンゲージメントとコミットメントなど、混同しやすい用語にも要注意です。
とはいえ、部分的に発達や臨床とも関わってくるので困難度はそこまで高くありません。
一方「福祉」はお堅い話が多く、とっつきにくい人も多いと思います。
私もかなり苦悩しましたが、法律や制度については「少数派に着目」することで解答力が上がりました。
たとえば児童福祉施設に関して、第1種社会福祉事業か第2種社会福祉事業かで分けると第2種が少数派で、残りが公共性の高い第1種です。少数派の施設だけ覚えておけば分類はできます。
そのほか、健康診査について勉強するときには、1歳6ヶ月児健康診査の「自閉スペクトラム症や虐待の発見に関わる項目」や、3歳児健康診査の「追加項目」を優先的に覚えたりしていました。
まずは太字レベルの重要事項を押さえるべきですが、アウトプットを見据えた「少数派ベースの学習」も1つの戦略としてトライする価値ありです。
犯罪・非行
「犯罪・非行」は現実で関わる人は少ないでしょうが、ドラマなどの影響で強く関心がある人は多いかもしれません。この科目は、理論や制度だけでなく近年の日本の犯罪動向(犯罪統計)も問われるのが大きな特徴です。
理論的なトピックでは、産業系と同様に「人物ー理論」の対応とその特徴を押さえることを意識しましょう。
制度的な話についてはイメージが湧きやすいので「福祉」ほど混乱することはないと思います。
『基本キーワード』の図を参照しつつ、まずは大きな流れを把握して個々の施設なり処遇なりを詰めていくとよいでしょう。
そして目玉の犯罪統計では、法務省の『犯罪白書』が必読です。
問題集で問われている犯罪をメインに、認知件数や検挙率、その動向など、最新情報をチェックしてまとめておく必要があります。
序盤で述べたとおり『犯罪白書』はとても読みやすい資料なので、読まず嫌いにならず早めに目を通すことをオススメします。
以上が、科目別の学習ポイントのすべてです。
いろいろと書きましたが、基本的にはどの科目も公式の参考書を使い込むのが合格の王道。
ここで挙げたポイントを意識しつつ、コツコツと学習を重ねていってください。
心理学検定の勉強法・まとめ
以上、私なりの心理学検定の勉強法でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
簡単に内容をまとめると、以下のようになります
・公式の教材だけでどの科目も合格可
・苦手科目:使いやすい一問一答から
・得意科目:基本キーワードを中心に
・+αで科目別のポイントを意識する
参考書の詳細については「メインの参考書」の各種リンクからご確認ください。
とくに特1級を目指す場合は範囲が広くて大変ですが、どの科目も公式の参考書を使い込めば確実に合格できます。
自分の理解度に合った参考書を選び、ときに科目別のポイントを意識しつつ着々と実力を養っていってください。
この記事が、あなたの心理学検定の合格を後押しすることができれば幸いです。
それでは。ファイト!
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